症例紹介#22【中高生の肩こり、首の過緊張の増加】

はじめに

中高生の肩こり、過緊張が増えている

今年に入ってから、当院では中高生の肩こりを主訴とする治療依頼が増加しています。

まだまだ統計が取れる様な人数ではありませんので、詳細な分析ではありませんが、やや女性の方が多いような感じはします。

今回の症例紹介では、特に印象に残っている女子中学生の症例をご紹介します。

患者

中学生女子
体格細身
最近イライラしていることが多く、夜も寝付けないようで夜遅くまで起きている」と母親に連れられて来院

主訴

「肩が凝って頭が痛い」
「授業中は眠たいのに、家に帰ると眠気がなくなる。」
「夜は目が冴えて、寝たいのに眠れない」
「イライラが抑えられなくなって怖い時がある」
参考として、この4つの主訴は最初の問診で全て聞き出せたものではありません。
子供は、初対面の大人にここまで正直に自分の悩みを打ち明けることはできません。
最初は
「肩こってる…」
「頭痛い…」
と、片言でしか答えてくれないのが普通です。
治療を通じて少しずつ警戒心を解いていって、本当の悩みを聞き出していきます。

問診特徴

伏目がちで、目を合わせない
ややつり目気味で、一見して不機嫌な印象を受けるが、瞼が下がり寝不足が伺えた
体格は細身だが、肩の僧帽筋が強く張り出し、首から肩にかけて三角形のフォルムを形成しており肩周辺の筋肉の強い緊張が伺えた
思春期になると、他人に警戒心を強く持つことが普通ですので、「目を合わせない」というのは普通です。
注意すべきは、その目に「力があるかどうか?」です。
本来若くエネルギーに満ちているはずです。
しかし、彼女は疲労のためかやや目が濁っているように感じ、
そのため、「疲労で自制ができなくなりつつある」と感じました。

身体所見

背術台にうつ伏せで寝てもらい、施術を開始しました。

最も特徴的だったのは

首の後ろから腰までの皮膚がピンと張り詰め、全くゆとりがない

ということでした。

これは、交感神経が昂り、血管を収縮させて防御姿勢を取り続けているためです。
交感神経は戦闘時に優位に働く神経で、血管を収縮させて血圧を上げ人を興奮させて集中力を高める一方、長時間その状態が継続すると血行不良を起こし、イライラや冷え、過剰な肩こり、気分障害を引き起こします。

そして、脳から伸びた交感神経は背骨の中を通り、胸椎と腰椎から外に出て全身に分布します。

そのため、背中の皮膚の張りは交感神経が緊張するとピンッと張り詰め、ゆとりがなくなってしまいます。

治療の注意点

交感神経が長期間にわたって亢進している患者に対しては、痛みは厳禁です。

痛みは脳が「攻撃されている」と錯覚し、交感神経をさらに亢進させてしまうからです。

この様な症状の患者さんに対しては、とにかく優しい刺激を心がけることが鉄則です。
過去に治療した同様症例もあわせてお読みください♪

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施術内容

左の図の赤色で表記した部位が、背中の緊張の強い部位になります。
この部位を優しく撫で上げた後、外側から背骨に押し当てる様に手のひらで丁寧に揉んでいくと、筋肉が痙攣して緩んでいく感覚が得られました。
つまり、筋肉が過剰に収縮した結果自ら伸び縮みできなくなってしまっていた状態を意味しています。
この筋肉を緩めるだけで、今回の患者は眠ってしまいました。
背中の筋肉の緊張を解くと、最後は首の筋肉を落ち着かせる必要があります。
ターゲットは、イラストにピンクで記載されている、「胸鎖乳突筋」という筋肉です。
この筋肉が硬くなると、
・噛み締めが強くなる
・就寝中に歯軋りする
・頭痛が続く
等の症状が見られるようになります。
肩こりや神経症状を緩和させる際には処置しなければならない筋肉ですが、方法を間違えるとノドを突いてしまうおそれがある為、処置しない治療院もあります。

症状によっては鍼を使わない方が良い時もある

当院は鍼灸院ではありますが、症状や患者さんの状態によっては鍼を使わず整体法のみで施術することも多くあります。

本症例のように
・患者は未成年で鍼は経験がない
・交感神経が緊張状態で、皮膚感覚が鋭敏になっている
場合などは、鍼は使いません。

整体法でゆっくりと痛くないように筋肉を揉んで、休ませていく方法が最善です。

本件の場合も、鍼は使わず整体法のみで背術を完了しました。

施術後に笑顔が戻った

施術までは目を合わせてくれませんでしたが、施術後は体が楽になったのか、終始笑顔で色々と話を聞かせてくれました。

・主訴

の項目に記述した4点も、施術後のこのタイミングで聞き出したものです。

この様な症状が出た原因として、本人が考えているのは
・SNSを通じて24時間誰かと連絡を取り合っている
・返信を返さないと、学校に行った時に「なんで?」と問い詰められるかもしれないと心配になる
・将来のことを考えると不安になる
・イライラして親に当たってしまって申し訳ないと思っているが、どうしようもない自分への苛立ち
ということでした。
SNSの悩みなど、40代の私が中学生の頃にはなかったものです。
推察ですが、今の子供は我々親世代が抱えていなかった悩みに重く苦しめられているのかもしれません。
まして思春期は色々と悩みが尽きない年代でもあります。
「たかが肩こりくらいで…」
などと言わず、一度じっくりと話を聞いてあげるといいかもしれませんね。

生活上のアドバイス

この様な年代のお子さんを持つ親御さんにおすすめしたいケア方法が、
スキンシップ
です。

思春期は大人ぶりますが、まだまだ子供です。

肌に触れて、優しく背中を撫でてあげるだけでも全然違います。

思春期の子供は彼らなりに、自分の制御できずに悩んでいます。

大人がオロオロするとさらに不安になってしまいますので、落ち着いて大きな気持ちで「ええんやで」と撫でてあげましょう。

まとめ

今回の症例紹介を簡単にまとめておきます。

  1. 肩こりやイライラ、不眠で悩んでいる思春期の子供は交感神経が過剰に昂っている恐れがある
  2. 「たかが肩こりくらいで」と言わず、一度真剣に話を聞いてあげる
  3. 家ではスキンシップを取り入れて、背中を撫でてあげる

ということでしょうか。

参考

当院では、24歳以下の学生を対象にした学割プランをご用意しております。

40分¥3,000で行っておりますので、ぜひご活用ください。

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