トリガーポイントとはそもそも何なのか?トリガーポイントの解説とトリガーポイント療法による除痛の機序についての解説

スクナビコナ鍼灸院奈良学園前が行っている
トリガーポイント療法
について、詳しく解説していきたいと思います。

この記事は少し専門的な内容となりますが、可能な限り専門用語を排して分かりやすい言葉を用いて解説していきます。

トリガーポイント(Trigger Point)とは何なのか?

トリガーポイント(以下TPと略す)とは、筋肉の疲労等により生じる、非常に敏感なしこりや硬さが見られる部位のことを指します。

押すと痛みが広がる(放散痛)特徴があります。
例えば、首を押しているのに腕の先にビリビリと痛みや痺れが起こることを指します。

TPは、筋肉や筋膜に生じます。

TPの周辺は筋肉が異常に緊張し、収縮した状態を維持しています。

その結果、血流の阻害が起こり、酸素の欠乏、生命活動による代謝産物の排出がうまくできなくなり、「痛み」として感じるようになります。

トリガーポイントの特徴

痛みに特徴がある

TPの痛みの特徴は、上記で少し触れました。

代表的なものとして放散痛(Referred Pain)があります。
首のTPが腕や肩甲骨、背中などに痛みを生じさせます。

そのほかに局所痛です。

TPのある部位そのものであり、押圧すると、重いような深い痛みを感じます。

血流障害を引き起こす

TPが形成されることによって、筋肉が常に収縮した状態となるため、血管が圧迫されます。

その結果血液循環の悪化が生じます。

具体的には
動脈血流の低下:結果が狭窄され、筋肉への酸素や栄養供給が減少する
静脈血流の停滞:静脈も圧迫される為、代謝産物等の老廃物の排出が妨げられ、疲労感が増大します
毛細血管の閉塞:微小な血管の循環が遮断され、局所的な虚血状態となり、指先の冷えや糸みみずのような細い血管跡が皮膚上に浮き出てきたりします。

また、過緊張の筋肉により神経が圧迫されるため、体の末梢部分(指先等)に痺れや皮膚感覚の鈍麻、過敏等が生じます。
放散痛もこれが原因によって生じています。

トリガーポイントと全身循環への影響

交感神経を過剰にする

TPが慢性的に存在すると、血液循環が悪くなります。

その結果、脳は全身に血液を供給するために血圧を上昇させ、血流を回復させようとします。

血圧を上昇させるためには交感神経を働かせる必要があるので、自律神経の交感神経を強く働かせます。

このメカニズムは、頸動脈や心臓から出ている大きな動脈「大動脈弓」にあるバロレセプター(圧受容器)が血圧や血流の変化を感知して起こります。(肩こりによって血圧上昇や頭痛、不安が起こる原因はここにあります。別の記事で詳しく解説します。)

しかし、血圧上昇の原因はTPの慢性化にあるため、血流障害が改善されず、交感神経が昂ったままの状態となり、自律神経異常となっていきます。

動作の補正と過負荷

TPがある筋肉が正常な機能を発揮できないため、たの筋肉が代償的に働く必要が出てきてしまいます。

この代償運動によって、健康な筋肉や関節に余分な負荷がかかり、新たなトリガーポイントが形成されることとなります。
(例えば、腰の筋肉にTPがある場合、それを補うために背中や脚の筋肉が過剰に働き、全身の痛みへと広がっていきます)

姿勢への影響

TPが原因で筋肉のアンバランスが生じ、骨格のアライメント(整列)が乱れます。

その結果、長期的には猫背や反り腰、肩の高さの左右さといった姿勢不良が生じ慢性痛の原因となります。

血流障害による疲労感の増大

血液の循環不良の結果、体の各組織が酸素不足に陥ります。

細胞は酸素を使ってエネルギーを作っています(好気性代謝)が、循環不良の結果細胞の酸素が不足すると酸素を使わない効率の悪い方法(嫌気性代謝)を使うようになります。

嫌気性代謝は、その代謝の産物として乳酸を排出します。

この乳酸は体を酸性(アシドーシス)へと傾けてしまいます。

アシドーシスによる体への影響

(1)酵素への影響

私たちの体は酸性とアルカリ性の間で常にシーソーをしていますが、体はその恒常性を保つために、酸性とアルカリ性の値「p H」という値を約7.4(弱アルカリ性)で維持しています。

この7.4という数値は、食べ物をエネルギーに変えたり、細胞を修復したりする際に働く「酵素」が最も効率よく働ける値なのです。

しかし、循環不良により体が酸性に傾くと、このエネルギー生成や体の修復がスムーズに作動しなくなってしまいます。

(2)筋肉や神経への影響

体が酸性になると筋肉がきちんと働かなくなり、痙攣や筋力低下が起きます。

神経も影響を受け、疲れやすくなったり集中力が低下する等の影響が生じてきます。

(3)酸性は細胞にダメージを与え老化する

酸性の影響は、細胞膜や周辺組織に及び、傷つけていきます。

すると、体は炎症を起こし、老化していきます。
(このあたりのプロセスも後日紹介します)

(4)酸素が足りなくなる

酸性になる、と聞くと酸素が多くなっている状態をイメージしますが、実際には「炭酸ガス」濃度が増えているのです。

簡単にいうと二酸化炭素濃度が血中で上がっているので、体が酸欠状態になっているのです。

そのため息切れしやすくなったり、疲労感が強くなります。

(体の酸性化については面白いので、まとめて後日記事にしてみます)

部位別のトリガーポイントによる不調

首や肩のTP

・肩こりや首の痛み
・頭痛:特に後頭部や側頭部に痛みが広がります。これは首のTPが原因であることが多いです。
・腕の痺れ:TPが神経を圧迫することで腕に痛みが放散して生じます

腰のTP

・腰痛:長時間同じ姿勢でいると生じやすく、坐骨神経を圧迫して脚に痺れを生じさせることもあります。
・内臓への影響:腰のTPは内臓、特に腸や膀胱に関連する症状を引き起こすことがあります。便秘や消化不良、頻尿等です。

これらは、筋肉と内臓が神経で結びついているためです。

トリガーポイント療法による効果

筋緊張の緩和(TPの解除) 鍼や指でTPを刺激することで、筋肉が弛緩して緊張が緩和されます
神経系の調整 鍼や指で筋肉の神経受容器を刺激して、脳や脊髄に情報を伝達させることにより、痛みを抑制するオピオイド分泌が促進され痛みが軽減します
自律神経のバランス調整 鍼灸治療は副交感神経を活性化させるため、心身のリラックスを強く促し全身の血流が改善されます。
炎症の抑制 血流障害によって生じた炎症を、血流の改善により抑制する

筋緊張の緩和のメカニズム
筋肉を刺激するとはなんなのか?

「筋肉を刺激する」とは、圧迫したり鍼で傷つけたりといった機械的な刺激のことを言います。

鍼がTPに刺入されると、その刺激が神経受容体(筋紡錘や自由神経終末)を活性化させます。

これにより、筋繊維が瞬間的に収縮する「ローカルツイッチング応答」が起こります。

筋肉が瞬間的に収縮すると、筋肉内の筋紡錘と、筋肉と骨をつなげている「腱」に存在しているゴルジ腱器官が筋肉の急な収縮を感知します。

それらは、過度の筋肉の緊張があると筋繊維が切れてしまうため、緩めるように指令を出します。

この時に筋肉がピクっと痙攣するような反応をローカルツイッチング応答と言います。

その結果筋肉が弛緩し、正常な状態へと戻ります。

スクナビコナ鍼灸院の治療は
ローカルツイッチング応答を狙っている

このローカルツイッチング応答は、TPの原因となっているポイントを局所で狙っていく手法になります。

鍼でTPを突いた場合、体の奥深くにズンッと響くような感覚が現れます。

これはまさに鍼治療で「響き」と言われるもので、東洋医学で表現すると「気が動いた証拠」とされます。

当院では、この「響き」を指で押す手技で再現することで、体の奥深くまで沈み込むような気持ちよさを出すことに成功しています。

この「気持ち良さ」というのは、肩こりや自律神経の治療には非常に重要なものなのです。

気持ち良さは全身の神経の緊張を抑えてくれる

自律神経の不調とはまさに交感神経が過緊張状態にあり、体が危機感を覚えている状態です。

こうなってしまうと、自力で過緊張状態を解除することは困難です。

ここで重要なのが、「気持ち良い」という感覚です。

体が危機感を覚えるのとは真逆の状況、快楽を体に強制することで、昂った神経を強制的にリセットしてしまうのです。

アニメやドラマである、「興奮した敵の首の後ろを打って気絶させるような感じ」です。

強制的に交感神経を眠らせるのです。

そのためには「気持ち良さ」が重要なのです。

 

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