はじめに
「お腹の調子が悪いと、なんだか気分まで落ち込む」「ストレスがたまると便秘や下痢になりやすい」——このような経験はありませんか?
実は、腸と自律神経は密接に関係しており、東洋医学でも古くから「腸の健康が全身のバランスに影響を与える」と考えられてきました。
西洋医学では、腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳と腸が自律神経を介して相互に影響を与えることがわかっています。
一方、東洋医学では「脾(ひ)・胃(い)」が消化吸収を司り、これらの働きが全身の「気・血・津液」の流れを整えるとされています。
本記事では、腸と自律神経の関係について、東洋医学の視点から解説し、腸内環境を整えて心身の健康を維持するための具体的な方法をご紹介します。
東洋医学における腸の役割
1. 「脾」と「胃」の働き
東洋医学では、消化器系の働きを「脾(ひ)」と「胃(い)」が担っていると考えます。
- 胃:食べ物を受け入れ、消化する
- 脾:消化された栄養を吸収し、気や血を作り出す
この脾・胃の働きが弱ると、気(エネルギー)が不足し、全身のバランスが崩れるため、疲れやすさ、冷え、便秘や下痢、肌荒れなどが生じます。
2. 「腸と自律神経」の関係
東洋医学では、腸の働きと自律神経のバランスは深く関係していると考えます。
- ストレスによる「気滞(きたい)」 → 腸の動きが停滞し、便秘になる
- 脾の機能低下による「気虚(ききょ)」 → 胃腸の働きが弱まり、消化不良を起こす
- 冷えによる「陽虚(ようきょ)」 → 腸の蠕動運動が低下し、ガスやむくみが生じる
- 熱がこもる「湿熱(しつねつ)」 → 腸内環境が乱れ、下痢や吹き出物が出る
つまり、腸の働きが悪くなると、体全体のエネルギー(気)の巡りが悪くなり、結果的に自律神経のバランスも崩れてしまうのです。
腸内環境の乱れが自律神経に与える影響
1. 腸内細菌と自律神経のバランス
腸内には約100兆個の細菌が存在し、「腸内フローラ」として知られています。この腸内フローラは自律神経のバランスを整える重要な役割を果たしています。
- 腸内環境が良好 → 副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなる
- 腸内環境が悪化 → 交感神経が優位になり、ストレスや不眠を招く
2. 腸の不調が引き起こす自律神経の乱れ
- 便秘 → 腸内に老廃物が滞ると、交感神経が過剰に働き、ストレスが増す
- 下痢 → 副交感神経が過剰に働き、体がリラックスしすぎてしまう
- ガスがたまる → 腹部の膨満感が脳へ伝わり、不安感やイライラが増す
3 腸内フローラが自律神経のバランスを整える仕組み
腸内フローラ(腸内細菌の集まり)は、自律神経と密接に関わっており、以下のようなメカニズムで自律神経のバランスを整える役割を果たしています。
① 腸と脳は「腸脳相関」でつながっている
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸内細菌が作り出す物質(神経伝達物質やホルモン)が迷走神経を通じて脳に影響を与えることが分かっています。
- 腸内環境が良好 → 副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなる
- 腸内環境が悪化 → 交感神経が過剰に働き、ストレスが増大
② 腸内細菌が「セロトニン(幸せホルモン)」を作る
腸内細菌の働きによって、セロトニン(精神を安定させるホルモン)の約90%が腸で作られることが知られています。
- セロトニンが増えると、自律神経が安定し、ストレスや不安が軽減される
- 腸内フローラが乱れるとセロトニンの産生が減少し、自律神経のバランスが崩れやすくなる
③ 腸内細菌が「GABA(リラックス物質)」を生産
腸内細菌の一部は、GABA(γ-アミノ酪酸)というリラックス効果のある神経伝達物質を作り出します。
- GABAが増えると、副交感神経が優位になり、ストレスが軽減される
- 腸内環境が乱れると、GABAの生成が減り、不安や緊張が強くなる
④ 腸内フローラが「炎症」を抑え、自律神経を安定させる
腸内環境が悪化すると、腸内で炎症が起こり、その炎症が自律神経を通じて脳のストレス反応を増大させることが分かっています。
- 善玉菌が多いと、炎症が抑えられ、自律神経が安定する
- 悪玉菌が増えると、炎症が広がり、交感神経が過剰に働く
腸の状態は「心の状態」と直結しており、腸が整うことで自律神経のバランスも改善されます。
腸内環境を整える東洋医学的アプローチ
1. 食事で腸を整える
東洋医学では、「脾・胃」を強化する食材を摂ることが重要とされています。
おすすめの食材
- 脾を補う食材:かぼちゃ、山芋、大豆、もち米
- 胃を温める食材:生姜、ネギ、にんにく
- 腸内環境を改善する食材:納豆、味噌、ヨーグルト
逆に、冷たい飲食物や脂っこいものは脾・胃の働きを低下させるため、控えるのが良いでしょう。
2. 運動で腸を活性化
適度な運動は腸の蠕動運動を促し、自律神経を整えるのに役立ちます。
おすすめの運動
- ウォーキング(30分程度)
- ヨガやストレッチ(特にお腹をひねるポーズ)
- 腹式呼吸(副交感神経を活性化する)
3. ツボ刺激で腸の働きを高める
東洋医学では、ツボを刺激することで腸の働きを活性化させることができます。
腸内環境を整えるツボ
- 天枢(てんすう):おへその両側にあり、便秘や下痢に効果的
- 関元(かんげん):おへその下にあり、腸の動きを活発にする
- 足三里(あしさんり):膝下にあり、消化機能をサポート
これらのツボを毎日3分ほど軽く押すだけで、腸の働きが整いやすくなります。
まとめ
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経のバランスを整える重要な役割を担っています。
東洋医学では、腸の働きを「脾・胃」として捉え、その調子が全身の健康に影響を及ぼすと考えます。
腸内環境を整えるには、
- 脾・胃を補う食事を意識する
- 適度な運動を取り入れる
- ツボ刺激を活用する
といった習慣が大切です。
慢性的な腸の不調や自律神経の乱れが続く場合は、鍼灸治療を取り入れることで、より根本的に腸の働きを整えることが可能です。
東洋医学の知恵を活かして、腸と自律神経のバランスを整え、健やかな毎日を送りましょう。
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