はじめに
「喉が渇きやすい」「寝汗をかく」「肌が乾燥してかゆい」——このような症状に心当たりはありませんか?
東洋医学では、これらの不調は「陰虚(いんきょ)」という状態に分類されます。
陰虚とは、体内の「陰(潤い)」が不足することによって、熱がこもりやすくなり、乾燥やほてりなどの症状が現れる状態です。
本記事では、陰虚の基本的な概念、陰虚による症状とその原因、東洋医学と現代医学の視点からの解説、そして改善のための具体的な方法について解説します。
陰虚とは何か?
東洋医学では、「陰」は体を潤し、熱を適度に冷やす役割を持っています。
陰と陽のバランスが取れていることで、体温調節や水分代謝がスムーズに行われ、健康が維持されます。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れなどにより陰が不足すると、体が適切に冷却できずにほてりや乾燥、寝汗などの症状が現れるのです。
陰虚の状態が長く続くと、慢性的な疲労感や不眠、皮膚のかゆみなどが悪化することがあります。
陰虚の症状と影響
陰虚が起こると、以下のような不調が現れることがあります。
精神的な影響
- イライラしやすくなる
- 集中力の低下
- 夜間に目が覚めやすい
- 不安感や焦燥感が強くなる
身体的な影響
- ほてり、特に午後や夜間に悪化
- 口や喉の乾燥
- 肌や髪の乾燥
- 便秘になりやすい
- 手足のほてりや寝汗
特に、夜になると症状が悪化しやすく、「寝汗」や「ほてり」に悩まされることが多くなります。
陰虚の原因(東洋医学・現代医学の視点)
東洋医学の視点
東洋医学では、陰虚の主な原因として以下が挙げられます。
- 過労や睡眠不足 → 体の回復が追いつかず、陰が消耗する
- 精神的ストレス → 気の消耗が激しくなり、陰が不足する
- 乾燥した環境や過度の発汗 → 体内の水分が減少し、陰の不足を引き起こす
- 辛い食べ物やカフェインの過剰摂取 → 体内の熱が増え、陰を消耗する
現代医学の視点
現代医学的に見ると、陰虚の症状は主に「自律神経の乱れ」「脱水」「ホルモンバランスの変化」と関連しています。
- 交感神経の過活動が続くと、体の冷却機能が低下 → ほてりや寝汗が出やすくなる
- 水分代謝の異常 → 口や喉の乾燥、便秘の発生
- 更年期障害との関連 → ホルモンバランスの乱れが陰虚の状態を悪化させる
このように、東洋医学と現代医学の視点から見ても、陰虚の症状は生活習慣やホルモンバランスと密接に関連していることが分かります。
陰虚を改善する方法
1. 食事で体を潤す
陰虚を改善するためには、潤いを補い、体の熱を鎮める食材を積極的に摂ることが重要です。
陰を補う食材
- 白きくらげ、豆腐、山芋(潤いを補う)
- 梨、スイカ、柿(体を潤し、熱を鎮める)
- ハチミツ、黒ごま、クコの実(滋養強壮)
- 亀ゼリー、緑豆、銀耳(東洋医学で陰を補うとされる食材)
控えるべき食材
- 香辛料や刺激物(唐辛子、にんにく、カフェイン)
- アルコール(体の水分を奪い、熱を増やす)
- 揚げ物や脂っこい食べ物(消化器系に負担をかけ、陰を消耗する)
2. 睡眠とリラックスを心がける
陰虚の人は、自律神経のバランスを整えるためにも、質の良い睡眠とリラックスが必要です。
- 夜更かしを避け、就寝時間を一定にする
- 寝る前にスマホやPCを控え、副交感神経を優位にする
- 深呼吸や瞑想を取り入れ、心を落ち着かせる
3. ツボ押しやお灸で陰を補う
陰虚を改善するためには、陰を補い、熱を鎮めるツボを刺激するのも有効です。
陰虚を改善するツボ
- 太渓(たいけい)(足首の内側にあり、陰を補う)
- 照海(しょうかい)(内くるぶしの下にあり、ほてりを鎮める)
- 関元(かんげん)(おへその下にあり、体の滋養を高める)
お灸を使うことで、さらに陰を補う効果が期待できます。
陰虚から派生する弁証(簡単に紹介)
陰虚は他の症状と組み合わさることで、以下のような弁証に発展することがあります。今は「こんなのがあるんだな」くらいの認識で大丈夫です。
- 陰虚火旺(いんきょかおう) → 陰が不足し、体内の熱が過剰にこもる(ほてり、のぼせ)
- 陰虚風動(いんきょふうどう) → 体の潤いが不足し、手足の震えや痙攣が起こる
- 陰虚陽亢(いんきょようこう) → 陰が不足し、陽の勢いが強くなり、高血圧や動悸が出る
- 陰虚血熱(いんきょけつねつ) → 血が熱を持ち、肌のかゆみや発疹が出る
まとめ
陰虚は、体の潤いが不足することで「熱がこもり、乾燥が進む」状態です。食事や睡眠、ツボ押しを活用することで、陰を補い、心身のバランスを整えることが可能です。
もし、慢性的な不調が続く場合は、鍼灸治療も有効な手段の一つです。専門家のアドバイスを受けながら、自分の体質に合ったケアを取り入れてみましょう。
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