あなたの舌は大丈夫?「胖大舌(はんだいぜつ)」

胖大舌(はんだいぜつ)とは?東洋医学の視点から解説

あなたの舌、大きく腫れぼったくないですか?

鏡を見たときに 「舌が大きく腫れぼったい」「舌の縁に歯の跡がついている」 という状態が気になることはありませんか?

東洋医学では、これは 「胖大舌(はんだいぜつ)」 と呼ばれ、体の水分代謝の低下や気血の不足と深い関係があると考えられています。

本記事では、胖大舌の特徴や原因、そして 改善のためのセルフケア まで詳しく解説していきます。

東洋医学 舌のイラスト


胖大舌とは?特徴と見分け方

胖大舌の特徴

  • 舌が全体的に腫れぼったく、大きい
  • 舌の縁に歯痕(ギザギザした跡)が見られることが多い
  • 舌の色は淡白(血色が薄い)または淡紅(健康な赤み)
  • 舌苔は白っぽく厚いことが多い
  • 舌が水っぽく、弾力がなくふにゃっとしている

胖大舌は 「体内の水分代謝の低下」「気血不足」 が関与していることが多く、むくみや冷えなどの症状が現れやすいです。

気血不足(きけつぶそく) とは、体を動かすエネルギー「気」と、全身を巡る栄養「血」が不足している状態 のことを指します。東洋医学では、気と血は 生命活動の基本 であり、不足するとさまざまな不調が現れます。
✅ 気血不足の主な症状
・疲れやすい、気力が出ない(気虚)
・顔色が青白い、唇の色が薄い(血虚)
・めまい、立ちくらみ
・髪や肌が乾燥しやすい
・手足が冷えやすい

胖大舌と歯痕舌の違いとは?

ここで、
歯痕舌と特徴や症状が同じじゃないの?
と思われた方はおられないでしょうか?

歯痕舌についての解説はこちらから

胖大舌と歯痕舌は、特徴や症状は同じですが、そこに至るまでの経緯に違いがあります。
以下にその特徴について解説します。

胖大舌と歯痕舌の違い

特徴 胖大舌(はんだいぜつ) 歯痕舌(しこんぜつ)
舌の形状 舌全体が腫れぼったく大きい 舌の縁にギザギザ(歯の跡)がつく
舌の色 淡白~淡紅(血色が薄い) 淡紅~やや紫っぽい
舌苔 厚めで白っぽいことが多い 舌苔が少ない or 薄い
主な原因 気虚・脾虚・腎陽虚による 水分代謝の低下 気虚・脾虚による エネルギー不足
主な症状 むくみが強く、体が重い、冷え、消化不良、軟便、話しにくさ 疲れやすい、胃腸が弱い、軽度のむくみ、倦怠感
関係する東洋医学的病証 脾虚湿盛(ひきょしつせい)・腎陽虚(じんようきょ) 脾気虚(ひききょ)・気血不足
関連する症候 全身のむくみ、下半身の冷え、軟便・下痢 消化不良・倦怠感、めまい、血虚による症状

簡単にまとめると

胖大舌むくみが強く、舌全体が腫れる。腎陽虚・水分代謝低下が原因
歯痕舌舌の縁に歯の跡がつく。気虚・脾虚によるエネルギー不足が原因

つまり、胖大舌は水分代謝の問題が強く歯痕舌はエネルギー不足(気虚)の問題が強いという違いがあります。

🔹 胖大舌の人は → 体を温めて水分代謝を改善するケアが必要
🔹 歯痕舌の人は → 消化機能を高め、気を補うケアが必要

胖大舌だとどんな不調がある?

胖大舌の人は、体に余分な水分が溜まりやすく、以下のような症状が現れることがあります。

こんな症状があるかも…

  • 全身がむくみやすい
  • 疲れやすく、気力がない
  • 手足が冷えやすい
  • 胃腸が弱く、食後にお腹が張りやすい
  • 軟便・下痢になりやすい
  • 舌が大きく、話しにくい・発音しづらいことがある
  • 湿気の多い季節に体調が悪化しやすい

特に 「脾虚(ひきょ)」や「腎陽虚(じんようきょ)」 の人に見られることが多いです。

脾虚とは、東洋医学でいう 「脾(ひ)」=消化吸収を担う臓腑 の機能が低下している状態を指します。脾が弱ると、栄養をうまく吸収できず、エネルギー不足や水分代謝の低下が起こります。
脾虚の主な症状
・胃もたれ、食後の膨満感
・食欲不振、疲れやすい
・軟便・下痢になりやすい
・むくみやすい、体が重だるい
・筋肉が落ちやすい、力が出ない
腎陽虚とは、体を温める力(陽気)が不足し、冷えや代謝の低下が起こる状態 のこと。手足の冷え、むくみ、腰のだるさ、疲れやすさ、頻尿などが特徴です。温かい食事やツボ刺激(命門・腎兪)で補うことが大切です。

胖大舌になりやすい体質とは?

こんな人に多い!

  • 脾虚タイプ(胃腸が弱い人) → 食欲がない・消化不良・むくみやすい
  • 気虚タイプ(疲れやすい人) → だるさ・元気が出ない・息切れしやすい
  • 陽虚タイプ(冷えが強い人) → 手足の冷え・下痢・倦怠感
  • 湿邪が溜まりやすい人 → 体が重だるい・水分の代謝が悪い

このような体質の人は、「脾(胃腸)・腎(代謝機能)」を整えることが重要 となります。


東洋医学的な改善法

鍼灸治療(補気・健脾・温陽・利水)

気虚・脾虚タイプ(エネルギー不足・消化機能低下)

  • 足三里(ST36):胃腸を整え、消化機能を高める
  • 脾兪(BL20):脾の働きを助け、エネルギーを補う
  • 中脘(CV12):胃の働きを活性化し、消化を促す
  • 関元(CV4):元気を補い、冷えを改善

陽虚タイプ(冷えが強い・代謝が低い)

  • 命門(GV4):腎陽を補い、体を温める
  • 腎兪(BL23):腎機能を高め、冷えを改善
  • 気海(CV6):体のエネルギーを高め、血行を促す
  • 湧泉(KI1):足元から全身の血流を改善

湿邪タイプ(むくみが強い・水分代謝が悪い)

  • 陰陵泉(SP9):余分な水分を排出し、むくみを解消
  • 三陰交(SP6):血と水の巡りを改善
  • 水分(CV9):体の余分な水分を排出

セルフケア方法(食事・ツボ・生活習慣)

食事療法(補気・健脾・温陽・利水)

胃腸を整える食材(補気・健脾)

  • 山芋、かぼちゃ、大豆、もち米
  • 鶏肉、卵、ナツメ、高麗人参

体を温める食材(温陽)

  • 生姜、ねぎ、シナモン、にんにく
  • 羊肉、くるみ、黒ごま

余分な水分を排出する食材(利水)

  • ハトムギ、小豆、とうもろこし
  • 白身魚、冬瓜、きゅうり(冷えが強い場合は控えめに)

まとめ

  • 胖大舌は「気虚・脾虚・陽虚・湿邪」が関係する舌象
  • むくみ・冷え・胃腸の弱さ・疲れやすさが特徴
  • 治療では「補気・健脾・温陽・利水」を中心に行う
  • 食事や生活習慣で、胃腸を整えつつ水分代謝を改善することが大切

胖大舌の人は 「胃腸を強くし、体を温めながら、水分代謝を整える」 ことがポイントです!
日常のケアで 健康的な舌と体を目指しましょう!

参考:歯痕舌・胖大舌と似た症状を持つが、原因が異なる舌の種類

舌の種類 主な原因 共通する症状 違い(プロセス)
歯痕舌 気虚・脾虚 むくみ・冷え・疲れ 気の不足による消化機能低下
胖大舌 脾虚・腎陽虚 むくみ・冷え・胃腸の不調 水分代謝の低下が主な原因
淡白舌 気血不足 冷え・疲れ・顔色が悪い 血の不足(血虚)が主な原因
紫舌(瘀血舌) 瘀血 冷え・しびれ・血行不良 血の巡りが悪く、血流が滞る
絳舌 陰虚火旺 ほてり・乾燥・冷えのぼせ 体内の潤い不足で熱がこもる

 

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