はじめに
近年、「オートファジー」という言葉が注目されています。
オートファジーとは、細胞が古くなったタンパク質や不要な成分を分解・再利用する仕組みのことであり、2016年に大隅良典博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになりました。
このオートファジーは、「断食(ファスティング)」によって活性化するとされています。
実は、この考え方は東洋医学の「食養生」とも深い関わりがあります。
本記事では、断食とオートファジーの科学的メカニズムを解説しながら、東洋医学の視点から断食の健康効果を考察していきます。

1. オートファジーとは? – 体の「リサイクル機能」
オートファジー(Autophagy)は、「自己(auto)を食べる(phagy)」という意味を持つ言葉です。この機能により、細胞内の古くなった成分を分解し、新しい細胞の材料として再利用することが可能になります。
オートファジーのメリット
・老化防止:ダメージを受けた細胞を修復し、老化を遅らせる
・免疫力向上:病原菌やウイルスを分解し、免疫機能を高める
・代謝改善:エネルギー効率を上げ、脂肪燃焼を促進する
・脳機能向上:アルツハイマー病などの神経変性疾患の予防につながる
オートファジーは、普段は低いレベルで働いていますが、「飢餓状態(断食)」によって活性化すると考えられています。
2. 断食がオートファジーを促進する理由
現代人の食生活は、1日3食に加えて間食や夜食を摂ることが一般的です。しかし、食べ続けることで体は常に栄養を取り込むモードに入り、オートファジーが十分に働かない状態になります。
断食とオートファジーの関係
🔹 食後3〜5時間:血糖値が上がり、インスリンが分泌される(オートファジーは抑制)
🔹 食後8〜12時間:肝臓の糖が使われ、脂肪燃焼が始まる(オートファジーが少し活性化)
🔹 16時間断食:オートファジーが本格的に働き始める
🔹 24時間以上の断食:オートファジーが最大限に活性化し、細胞の再生が促される
これを利用したのが、近年流行している**「16時間断食(インターミッテント・ファスティング)」**です。
3. 東洋医学における断食の考え方
東洋医学では、古くから「食べすぎは気の巡りを乱し、病気のもとになる」と考えられてきました。
特に、**「脾(消化機能)」と「気血の流れ」**に与える影響が重視されています。
東洋医学的に見る断食のメリット
🟢 脾(ひ)の負担を軽減:食事を減らすことで消化器官の疲れをとり、気の流れを整える
🟢 瘀血(おけつ)の解消:食べすぎによる血液の停滞を改善し、血流を促す
🟢 陰陽のバランス調整:体内の余分な湿気(湿邪)を取り除き、冷えやむくみを防ぐ
🟢 気虚(ききょ)を防ぐ:適度な断食で胃腸の機能を回復させ、エネルギー(気)を高める
特に、中国の古典医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「暴飲暴食は病を招く」といった記述があり、節食(食事の制限)を健康維持の手段として推奨していました。

4. 科学と東洋医学を融合した「オートファジー断食」の実践法
現代の研究と東洋医学の知識を融合し、効果的にオートファジーを活性化させるための断食方法を紹介します。
基本ルール(16時間断食)
例:夜8時に夕食 → 翌日12時に昼食(16時間の断食)
- 断食時間中は水・お茶・ブラックコーヒーはOK
- 食べる時間(8時間)は消化に良いものを意識(和食・発酵食品)
東洋医学的なポイント
✅ 「陽の気」を活かす:朝は白湯や生姜茶で内臓を温める
✅ 「気血の巡り」を意識:断食明けの食事は野菜・発酵食品を取り入れる
✅ 「陰陽のバランス」を考える:冷たいもの・砂糖の摂りすぎは避ける
5. 断食の注意点とデメリット
断食には多くのメリットがありますが、体質や体調によっては注意が必要です。
東洋医学的に「断食を控えた方がよい人」
❌ 気虚(エネルギー不足)の人:極端な疲労感がある人、慢性的な冷え性の人
❌ 血虚(貧血気味の人):めまいや立ちくらみがある人
❌ 妊娠中・授乳中の人:体に必要な栄養が不足する可能性がある
オートファジーを活性化することは健康に良いとされていますが、極端な断食や長期間の食事制限は逆効果になることもあります。体調に応じて、無理のない範囲で実践することが重要です。

まとめ:断食は「細胞の大掃除」と「気の巡り」を整える最強の健康法
東洋医学の「食養生」と最新科学が示す「オートファジー」は、どちらも「食べない時間を作ることで体の修復力を高める」ことを重視しています。
✅ オートファジーを活性化すると、老化防止・免疫向上・代謝改善につながる
✅ 東洋医学では「脾」の負担を軽減し、気血の流れを整える養生法とされていた
✅ 現代の「16時間断食」は、オートファジーを促進しながら無理なく続けられる方法
科学と伝統医学の視点を取り入れ、自分に合った断食を取り入れることで、より健康的な体を目指していきましょう。